私たちを取り巻く社会では、『どうしようもない。他には選択肢がない』と感じさせる事が多くあります。また、仕事ができる人ほど、『やりたい事』ではなく『やらなければ』と思うことが増えていき、ストレスが溜まる一方になります。
みなさんは、自らが選択する事を少しずつ放棄し、いつの間にか誰かの言いなりになったり、周りと同じレールを探すようになっていないでしょうか?
私たちが生きる現代は、モノや情報が溢れ、選択の外的側面(どんな選択肢があるか)に目を奪われがちになります。そして、選択の内的要因(選ぶ能力)について殆ど議論される事はありません。
『選択』とは行動であり、与えられるモノではなく、自らが掴み取るモノです。場合によっては、選択肢が限られているでしょう。しかし、その選択肢の中からより良いモノを選べぶのか、人の言いなりになるのかは、いつでも自分次第なのです。
選ぶ能力は奪われるのではなく、自分自身が手放してしまっているに過ぎないのです。
我々を人間にするのは、選択する能力である(マデレイン・レングルー作家)
『選択』を放棄する原因
ポジティブ心理学の生みの親である『マーティン・セリグマン』らによって行われた有名な実験が、『なぜ人は選ぶ能力を手放してしまうのか』という問い答えてくれています。
マーティン・セリグマンは、犬を使った実験で『学習性無力感』という現象を発見したのです。その実験は
- 犬を3つのグループに分ける
- Aグループは、鎖に繋がれた状態で電気ショックを与える(電気ショックを止めるパネルを用意する)
- Bグループも鎖に?れが状態で電気ショックを与える(パネルを踏んでも電気ショックを止められない)
- Cグループは、ただ鎖に繋がれているだけで電気ショックは与えられない
- 片面だけ電気ショックが発生する床、低い壁の向こうには電気ショックがない床を用意した部屋へ連れて行く
- A、Cグループの犬たちは、小さな壁をすぐ飛び越えて反対の床に逃げ込んだ
- Bグループは、壁を飛び越えようともせず、電気ショックから逃れる方法を探しもしなかった
という実験でした。
為す術もなく電気ショックを受けていた犬たちは、他に選択肢がある事を忘れてしまっていたのです。どうしようもない『無力感』を身につけてしまい、行動することを諦めてしまったのです。
この犬たちと同様に、我々人間にも『学習性無力感』はあるのです。何か最初の段階で躓いたり、どうしようもない難題に苦しむと、努力を投げ出してしまいます。何もしても無駄だと思い込み、そのほか別の出来事に対しても同様に考えてしまうのです。
仕事や私生活でも、同じように感じ、行動する事、選ぶ事を放棄してはいないでしょうか?程度は違えど、『学習性無力感』誰もが経験しているはずです。しかし、その無力感に囚われてはいけません。
エッセンシャル思考の最初の一歩は『選択』すること
自由意志の最初の一歩は、自由意思を信じる事だ(ウィリアム・ジェイムズー哲学者)
エッセンシャル思考を身に付けるいは、『選択』という行為に自覚的でならなくてはなりません。選ぶ力は自分だけのモノであり、誰かが奪えるものではありません。
『選択』する事を忘れた人は、無力感に囚われ自らの意思がなくなり他人の選択に従うようになります。確かに、非エッセンシャル思考が溢れる現代に生きる私たちにとって、最初の一歩を踏み出す事は簡単ではないかもしれません。
いくつもの困難に直面し、自分の無力さを痛感する事が何度もありました。
もしかしたら、次の『選択』でも同様の事が起きるかもしれません。
しかし、『選択』する力を放棄してはなりません。
私たちが幸せに生きるためには、『原因論』ではなく『目的論』に従うべきだと考えます。傷ついた(原因)から動けないのではないのです。動きたくない(目的)から傷ついた過去を引っ張り出しているのです。
人生が終わる時、いくつかの後悔は残るでししょう。しかし、『エッセンシャル思考』で生きた事は後悔しないはずです。
『選択』する力の価値を理解し、実行する。自分らしく、人間らしく生きるためには、他人に自分の人生を決めさせてはいけないのです。
ゴルフが上手くなるメンタル術
- どんなにピンチでも「選択」を放棄してはならない
- 次のショットも失敗するとは限らないと意識する
エッセンシャル思考で生きる道
エッセンシャル思考で生きるためには、『トレードオフ』を受け入れなければなりません。何かを選ぶ事は何かを捨てる事なのです。
戦略には選択とトレードオフが付き物だ。独自性を意図的に選び取るのである。(マイケル・ボーダー)
そのために、『選択肢』については、じっくりと時間をかけて検討する必要があります。また『選択』の基準作りも徹底的に行い、精査する必要があります。「全部やらなくては」と考えから抜け出し、『決定的に重要なことだけ』をやるために、物事の本質を見抜く力をつけていく必要があります。
まずは小さな『選択』から練習しましょう。そして徐々に大きなテーマでも正しい選択が出来るよう進んで行きましょう。
エッセンシャル思考に生きるため、今までの固定概念を捨て去り、考え方を根本的に変える必要があります。これは決して簡単な事ではありません。しかし、決して不可能な事でもありません。
エッセンシャル思考に生きると『決意』した人だけに開かれる扉があります。
エッセンシャル思考で大成功した格安航空会社
金融情報誌『マネー』によると、1970年?2000年の間で最も株主に収益をもたらしてくれた会社は、IBMやGE、インテルではなく『サウスウエスト航空』という格安航空会社でした。
利益を出すのが難しい航空業界ながら、創業者ハーバード・ケレハーのエッセンシャル思考によって、毎年目覚ましい業績を上げつつけたのです。
サウスウエスト航空の戦略
- 大手航空会社が ハブ空港を拠点に路線を拡大するなかで、サウスウエスト航空はあえて2都市間を単純につなぐ 「ポイント・トゥ。ポイント」路線にこだわった。
- 凝った機内食で高い料金をとるかわりに、機内食を出さないことを選んだ。
- 座席指定を廃止して、好きな席に座れるようにした。
- 至れり尽くせりのサービスで価格をつり上げるよりも、単純に乗り物として使ってもらうことにした。
これらのトレードオフはコストダウンという戦略に沿って、厳密に選ばれたものです。もちろん行き先を限定する事や、サービスを限定する事で、それを望む顧客を失うというリスクはありました。しかし、ハーバード・ケレハーは明確なビジョンに基づきトレードオフを実行しました。
サウスウエスト航空は格安航空会社であり、お金の掛かるオプションは会社の本質から外れていると考えたのです。
「あらゆる選択肢を見たうえで、こう言わなくてはならない『お断りします。我々の目指す目的に貢献しない事をいくらやっても意味が無いのです』と」(ハーバード・ケレハー)