ストローク・ゲインド(SG)は、コロンビア大学のマーク・ブローディ教授によって確立された、ゴルフの実力を測る「指標」の1つです。
統計学者であるマーク・ブローディ教授は、10年以上に渡りショットのあらゆるデータを分析し、「ゴルフメトリクス」というデータベースにショットデータを蓄積してきました。
他方、PGAツアーでは「ショットリンクス」というショット毎のデータ収集システムを2003年から運用しており、マーク・ブローディ教授は、これら2つのデータを「ダイナミックプログラミング」という手法に基づき「ストローク・ゲインド(SG)」と呼ばれる新しい指標を生み出しました。
現在では、PGAツアーにおいて、ドライバー、アイアン、アプローチ、パットなどの技術力を示すために以下の6カテゴリーの「ストローク・ゲインド(SG)」を公表しています。
「ストローク・ゲインド(SG)」を和訳すると「打数を何で稼いでいるのか」です。
「ストローク・ゲインド(SG)」の種類と意味
Strokes Gained Putting (SG: Putting)
ストロークゲインド・パッティングは、プレイヤーがグリーン上で獲得した(または失った)ストローク数を測定します。
Strokes Gained Tee-to-Green (SG: T2G)
ストロークゲインド・ティー・トゥ・グリーンは、第1打の打ち出しから、ゴルファーがグリーンに到達するまでのすべてのショットです。
Strokes Gained Off-the-Tee (par-4s and par-5s tee shots)
ストロークゲインド・オフ・ザ・ティーは、すべてのパー4とパー5のホールの、ティーからのパフォーマンスを測定します。
Strokes Gained Approach-the-Green (outside 30 yards 含む par-3s tee shots)
ストロークゲインド・アプローチ・ザ・グリーンは、アプローチショットのプレイヤーのパフォーマンスを測定します。
アプローチショットには、パー4およびパー5のホールのティーからのものではなく、ストロークゲインド・アラウンド・ザ・グリーンおよびストロークゲインド・パッティングに含まれないすべてのショットが含まれます。
アプローチショットには、パー3のティーショットが含まれます。
Strokes Gained Around-the-Green (any shots within 30 yards)
ストロークゲインド・アラウンド・ザ・グリーンは、グリーンの端から30ヤード以内のショットのプレイヤーのパフォーマンスを測定します。
この統計にはグリーン上のショットは含まれません。
Strokes Gained Strokes Gained Total (SG: Total)
ストロークゲインド・トータルは該当試合の平均スコアから自身のスコアを引いた値です。
「パット数」ではパターの実力が分からない
パッティングはゴルフスコアを構成する1つの要素に過ぎず、パット数はスコアへの貢献度やパットの実力を示す指標にはなりえません。
例えば、アイアンの調子が悪く常に12m以上のファーストパットから2パットでしのぎ続け36パットだったAさんと、キレッキレのアイアンながらも2mのパットを外し続け35パットであがったBさんでは、Bさんの方がAさんよりパターが上手いと言えるのか?という事です。
2003~2012年のPGAツアー平均パット数では、12mを超えてくると「2.06」であり、2.5m程度の平均パット数は「1.42」です。
この時、パット数でいえばBさんがAさんを1打上まっていますが、ストロークゲインド・パッティングという指標で考えると、Aさんはパットで1打稼ぎ、Bさんはパットで10打失ったことになります。
このような説明を聞くと、「ストローク・ゲインド(SG)」という指標が、実力を測るのに適切な指標であると、理解できてくると思います。
※出典:「ゴルフ データ革命」(マーク・ブローディ)No.1166 表3.10
「パットイズマネー」という神話
ゴルファーなら誰でも聞いたことのある「パットイズマネー」というフレーズは、長い間多くのゴルファーが盲目的に信じていた神話のひとつです。
確かに、ゴルフ中継をみていると、「このパットを決めれば優勝です!」というシーンに多く出くわします。
そして多くの著名なゴルファーがパットの重要性について言及してきました。
確かに、「パットイズマネー」が正しい場合も多くありますが、しかし真実は違います。
パッティングは他のショットと比べ、その重要性を過大評価されているのです。
2004年~2012年の間に米PGAツアーで優勝したプレーヤーの、優勝した試合におけるパッティングの貢献度(パットで「稼いだスコア)は、平均で約35%にすぎませんでした。
つまり、パット力よりも、ショット力が優勝に貢献する割合のほうが、圧倒的に高かったのです。
そしてこの傾向は、アマチュアゴルファーになるほど強くなってきます。
世界のトッププロでも2.5mのパット数平均は1.5打
ゴルフ中継ではスーパーショットであったり、勝負を分けるシーンにフォーカスされて放送されるので、トッププロはほとんどのショートパットを決めているように感じてしまいますが、世界のトッププロでも2.5mの距離を1パットで沈める確率は50%程度です。
もちろん、グリーンがとてつもなく速いため、切れるラインでの難しさは私たちがプレーするグリーン比ではありませんが、ショートパットでも結構外しているのです。
パットの名手であるルークドナルドでも1パットであがる確率は57%程度です。
これがどれくらいスコアに影響するかというと、2.5mのパットが15回あったとしても、トータルで1打しか平均的なプレーヤーに対してスコアは稼げません。
4日間のトーナメントを戦うトッププロにとっては大きな差になりますが、私たちアマチュアゴルファーにとっては2.5mの距離の精度を上げるより、OBを打たないティーショットを練習する方が遥かに効率的だと考える方が合理的です。
ティーショットでOBを1発でも打てば、2打スコアを失うのですから。
ちなみに、90台で回るゴルファーが2.5mを1パットで沈める可能性は27%程度です。
打数にするとプロと0.25打程度しか実力の差がないのです。
ストローク・ゲインド(SG)を計測するには「Garmin Approach」がオススメ
PGAツアー選手であれば、協会がすべての試合でのショットを記録し、ストローク・ゲインド(SG)を知ることができます。
一方我々アマチュアゴルファーの場合は、自分自身でショットの記録やデータ解析を行わなければなりません。
「Golfmetrics」というアプリ(iPhone・iPad)を使えば、ストローク・ゲインド(SG)を算出する事ができますが、その作業はめちゃくちゃ面倒なようです。
そこでオススメなのが「Garmin」から発売されている「Approach」シリーズと、それらの時計に連動できるアプリ「Garmin Golf」を使ってストローク・ゲインド(SG)を計測する方法です。
「Garmin Approach」の上位機種は、ショットする度に打点位置をGPS登録する事ができます。
その機能を利用し、ドライバーを何yd飛ばしたのか、真っすぐだったのか、曲げたのか、ショートパットやロングパットはどうだったのかと集計を重ねてくれます。
そして、同じようなハンディキャップのゴルファーと自分のスキルがどの点で優れていいて、どの点が劣っているのかアプリで確認することができます。
これによって、フェアウェイキープ率やパット数などの数値に惑わされず、稼げるショット、損してるショットは何なのか明確に知る事ができるのです。
個人的には、時計型ゴルフナビとして飛距離を計測する以上に、ストローク・ゲインド(SG)を手軽に計測できる点が「Garmin Approach」の最大の強みだと思っています。
※「Garmin Approach S62」のレビュー記事はこちら
この記事を読んで、自分自身のストローク・ゲインド(SG)を知りたいなと思った人は、ぜひ「Garmin Approach」シリーズの購入を検討してみてください!
また、ストローク・ゲインド(SG)をより深く学びたいな感じた人は「ゴルフ データ革命」を読んでみてください!