『幸福』という名詞についての説明は、誰が行ってもそう大差はないでしょう。しかし『幸福』というのは相対的なもので、それを感じる人によって異なります。幸福かどうかは個人的な感じ方に基づくため、その人がどのくらい幸せかを判断するには本人しかいません。
心理学者は「主観的幸福度」ということばを使い、基本的には「意味や目的を伴う深い喜び」のポジティブな感情を覚える状態と定義しています。また、ポジティブ心理学の創始者であるマーティン・セリグマンは、幸せを
- 喜び
- 夢中になること
- 意味を見出すこと
の3つの測定可能な要素に分けて考えています。喜びだけを追求するのではなく、3つの要素すべてを求める人が本当に満たされた人生を送る事が出来るとという事を実証しています。
『幸せ』や『ポジティブ感情』を追求する事は人間に与えられた特質であり、成功するために欠かせない重要な要素でもあるのです。
仕事のみならず、結婚生活、健康、友人関係、地域社会との繋がり、創造性など、私たちの生活のあらゆる面で幸福感が成功を導いている事が、およそ200種の心理学を統合し、275,000人の被験者データから導かれているのです。
『幸せ』であるから『成功』するという事実
スポーツや勉強、または美容で、その他の人より優れている人たちは、ビジネスや私生活で成功しているから幸せだと考える人も多いのではないでしょうか。私たちは幼い頃から、努力し頑張っていれば成功し、その結果幸せになれると教えられて育ちました。
しかし、『幸せが成功に先行する』という事実を、ポジティブ心理学が行った膨大な検証データによって、証明され始めているのです。
社員のポジティブ感情と業績の調査
- まず社員のポジティブ感情レベルを測る
- 1年半業績を追跡調査する
- 最初にポジティブ感情が高かった人は、そうでない人と比較し評価が高く給料も多くもらっていた。
職場が楽しいという事が、何よりの成功の秘訣です(リチャード・ブランソーヴァージングループ会長)
カトリック修道女の幸福度と寿命
- 1917年以前に生まれた修道女の日記からポジティブ感情を数値化
- 20歳の時の幸福度が寿命に関わりがあるか追跡調査
- ポジティブな内容を書いていた修道女は、10年程度長生きしていた
- 幸福度上位25%の修道女は、その90%が85歳でも存命だった
幸福度と免疫力の関係
- 実験協力者の幸福度を測る
- その後全員に風邪のウイルスを注射する
- 1週間後の体調を医師が診察すると、幸福度の高い被験者の多くはウイルスに打ち勝っていた
ポジティブ感情が脳の機能を高める
ポジティブ感情は、可能な選択肢を増やし、より思慮深く、想像的に、新しい考えに対して心を広げてくれる『拡張効果』があるということを、バーバラ・フランクリンが実証しました。これは、フランクリンの『拡張ー形成理論』と呼ばれています。
ポジティブ感情によって、ドーパミンやセロトニンという幸福に関する化学物質が多くなると、脳の学習機能を司る海馬や前頭前野の脳細胞が活発化します。また海馬の近くに位置して感情を司る扁桃体が、海馬の脳細胞に影響を与え、記憶の定着を強めるのです。
また、ポジティブな感情は側頭頭頂部など脳の視覚野を活性化する事で、情報の記憶、操作と高次認知機能を高めてくれます。ポジティブな感情を抱く事が、視野を広げ、脳のポテンシャルを最大限まで引き出せるという事が、ポジティブ心理学の研究だけでなく、脳医学の面からも証明されているのです。
優れた企業は職場環境を社風に合わせて好ましいモノにかえ、幸福度の高いCEOの下で働く社員は、幸福度や健康面も優れています。『幸福な職場』の利点は数え切れないほどあるのです。
Yahoo!は社内にマッサージパーラーを設け、Googleは愛犬と一緒に出社する事を許可しています。これは、宣伝のためでなく、社員のポジティブ感情を高め業績を上げるために実施しているのです。
脳にポジティブな思考を持たせる
脳にポジティブな思考を持たせる事は、決して難しい事ではありません。楽しかった事や嬉しかった事思い出すだけでもいいですし、飴を1つ貰うだけでも十分効果があるのです。
例えば、
- 楽しい事を思い出す指示を受けた子供達は積み木のパズルをより早く正確にやり遂げた
- 最も楽しかった日を考えるよう促された生徒は、数学のテストで平均より遥かにいい成績を残した。
- 飴を1つもらった医者は、患者の病状をより早く正確に診断する事ができた
- 飴を1つもらった医者は、第一感に捉われず、柔軟な診断が可能であった
といった実験のデータがあります。
ポジティブ感情をより多く持つ人は、子供でも大人でも、ずっと効率よく、また創造的な仕事が出来るという事を様々なデータが裏付け始めています。
ほんのわずかの幸福感でも、重大な競争優位性をもたらす力があるのです。
ただひたすらに努力し、その努力がやがて幸せをもたらすだろうと耐えている人より、生活のあらゆる面でポジティブな状況を見出し楽しんでいる人の方が、遥かに優位な状況で人生を歩む事ができるのです。
ポジティブ感情が持つ『打ち消し効果』
ポジティブ感情は、私たちの知的能力や創造性を増やすだけではなく、ストレスや不安を消し去る働きがあり、これを心理学では『打ち消し効果』と呼んでいます。
ストレスに関する実験は数多く行われていますが、喜びや幸せな気分を引き出すような画像を見ただけで、ストレスによって生じた、血圧や心拍の上昇から速やかに解放さる事が分かっています。つまり、ポジティブな感情には、ストレスや不安い対する強力な毒消し効果があるのです。
大事なプレゼンの前に行うこと
あなたが上司の場合、プレゼンテーションの重大さを伝えてストレスを増やすのではなく、励ましの言葉や、部下の強みを伝えましょう。あるいは、自身に満ち説得力のあるプレゼンテーションを行い、聴衆の心を掴むシーンを想像できるような言葉をかけましょう。過去の成功体験を思い出させるのもいいかもしれません。
不幸にもネガティブな思考回路を持つ上司を持っている人は、まず上司の声の届かない場所に行きましょう。そして、好きな音楽を聴いたり、写真を見たり、恋人に電話するのもいいかもしれません。ポジティブな感情とプレゼンテーションの不安が『3対1』以上になるまで、ちょっとした幸せを積み上げてみてください。たったそれだけで、あなたは能力を最大限に活かす事ができます。
ゴルフが上手くなるメンタル術
- 幸せを感じることが次の一打を成功に導く
- ポジティブな思考が能力をフルに発揮させるコツ
- ショットに不安を覚えたら、その3倍ポジティブなイメージを作る