『時間』というものは、私たちにとって最も大切な限られた資源の1つです。そして『時間』は一方方向に動き巻き戻せないというものは、世の中にある絶対的に確かなモノの1つでしょう。確かに、カレンダー上はその通りです。
しかし、心理学者のエレン・ランガーが行った実験によれば、『老化』という現象は、時間を遡る事が出来るというのです。エレン・ランガーはその実験で、「人の精神構造、つまり人が自分自身をどう捉えるかが、老化の肉体的プロセスに直接影響する」と語りました。つまり、『マインドセット』(支点)と『可能性(てこ)』を動かすことによって、年齢という「客観的」な現実を変えられることを実証したのです。
外的な『現実』というのは、私たちが考えている以上に、はるかに融通が利くモノなのです。『現実』は私たちの『現実の捉え方』に多く依存しており、『マインドセット』(心の持ちよう)を変えれば、『現実』や『行動の結果』をコントロールする力は、飛躍的に大きくする事ができるのです。
心の持ちようが経験の『客観的な結果』さえも変える
日本には古くから『病は気から』という言葉があります。この言葉だけを聞けば、ただの精神論にしか感じませんが、『プラセボ(偽薬)効果』の実験結果を考えれば、あながち間違ってはいないと思えるはずです。
例えば、プラセボ効果を調べる実験を行った科学者は「プラセボが痛みをコントロールする効力は、本物のアスピリンやコデインなどの薬の55%〜60%である」としています。また日本の逆プラセボ効果を検証する実験では、「漆の汁と思わせた無害の樹液を右手に塗るという実験では、被験者全員が痒みや腫れ、発赤など典型的な漆かぶれの症状が現れました。そして、左手には無害な樹液と思わせた本物の漆の汁を塗りましたが、アレルギー反応があったのは15%程度に留まりました。」と報告しています。
つまり、今起きている事や、これから起きると考えられる『相対的な認識』が、実際に起きる事に影響を及ぼすのです。私たちの脳は、次に起こる事をよそくし反応するように出来ており、これを『期待理論』と呼びます。
神経科学者のマーセル・キンズボーン博士によれば、「期待は脳に何らかの反応を生じさせるが、それは現実世界の出来事によって生じるのと同じくらい本物でありうる」と説明しています。
日々の行動を自分がどう捉えるかによって、その行動自体よりも『現実』を決定するという事があるのです。
相対的な経験を活用し1日の時間軸を伸ばす
時間は絶対的である一方で、相対的な性質も持つという事を理解する必要があります。「なぜ1日は24時間しかないのか」と嘆くのではなく、「どうしたら1日の相対的な経験を、最も有効に活用できるか」を考えなければなりません。
ポジティブなマインドセット(支点)を持つ事で、相対的な意味で時間をコントロールする事が出来るのではないでしょうか。つまり、誰にでも平等に与えれてている「1日24時間」を、より効率的で生産性の高いものにすれば、それ以上の時間を過ごせた事になるのです。
脳の仕組みを利用するために、これから行う行動に対して「ポジティブな表現を声に出す」という事が有効です。一方で「デッドライン」のようなネガティブな言葉を選ぶ事を止めるべきです。行動の結果にだけ注目するのではなく、手段そのものを楽しむ仕組みを実践する必要があるのです。
『ポジティブなマインドセット』で支点の位置を変えて、これから過ごす時間の捉え方を変えれば、相対的に1日の時間を伸ばす事が可能になるのです。
物事のとらえ方を『選択』する
人間の脳は非常に優れている一方で、実は同時に複数を選択する事は難しく、そのリソースは限られています。そのため、私たちは日々『選択』を迫られているのです。
経験したモノから、痛みやストレス、不安だけを見つめるのか、それともその中から希望や夢、感謝、期待、意義などを見出すのか、私たちは『選択』する事ができます。もちろん捉え方を変えるだけで、現実を変える事はできませんが、脳の働きを利用し経験した事の『情報処理』を変える事が出来ます。
『幸福感』はネガティブなモノを見て見ぬ振りをするモノではなく、また自分を装って感じるモノではありません。脳の働きを利用し、現実の環境の中で『より良い方向』へ向かう道を見出せるようにする事で手に入れられるのです。その場凌ぎのポジティブシンキングでは、本当の意味で『幸福感』を手に入れる事は出来ないのです。
ゴルフが上手くなるメンタル術
- ミスショットに対しての反応を「選択」しなければならない
- 1打の罰を受け入れ積極的にボギーを狙う
- チャレンジングな状況を「面白くなったぞ!」とポジティブ言葉で捉える etc.
潜在的な可能性を最大限に発揮する方法
十分な長さのテコと、それを置く事の出来る支点があれば、私は地球を動かして見せる(アルキメデス)
テコの原理を使えば、シーソーに乗る像を指1本で持ち上げる事が出来ます。エネルギーの働く点(支点)を動かす事で、強力なテコを作り出し、今持っている力を強化する事なく像を持ち上げる事が出来るのです。この力を大きくしていけば、つまり十分な長さのテコとそれを置く事が出来る支点さえ作れば、地球でさえも指1本で持ち上げる事が出来るのです。
そしてまた、テコの原理は物理の世界に限った事ではありません。私たちの『脳』も、これと同様に小さな力で大きく働かせる事ができるのです。私たちの『脳』におけるテコの長さや支点は
- 自分が持っていると信じる潜在能力や可能性(テコの長さ)
- 変化を起こす力を生じさせるマインドセット(支点)
の2つであると言い換える事が出来ます。
『より良い結果』を求めてがむしゃらに頑張るのではなく、『マインドセット』を動かし支点の位置を変えるて、可能性というテコを長くする事ができれば、より大きな力を生み出す事が出来るのです。
一方、『マインドセット』をネガティブな方向に動かしネガティブな心を優位にしてしまえば、本来持っている力や可能性を十分引き出す事は不可能になるでしょう。このバランスについては、心理学でありビジネスコンサルタントでもあるマルシャル・ロサダが研究し、成功をもたらすためには、ポジティブな感情とネガティブな感情のバランスが『2.9013対1』(ロサダライン)以上を保つ必要があると発表しています。
また、アインシュタインの『特殊相対性理論』によれば、多くの不動に見える宇宙の法則も、観測者によって違ってくると言います。つまり、『客観的で固定的』に見える世界でも、全く不可能であった事が、突如可能になるという事があり得るのです。
例えば、『時間』のように固定的で動かしようのないものでさえ、実際には『動くスピード』に対して相対的であるのです。
そして『相対性』というのは、物理学だけの話ではありません。私たちが経験しているすべての瞬間は、脳によって主体的にそして相対的に認識されるのです。
『現実』というものは、それをどこで切り取り、どのように見たかに基づき、その人の脳が相対的に理解したものに過ぎません。大切な事は、この『視点』は変える事が出来るということです。
つまり、『マインドセット』を変えれば、この世界をどのように経験するかも変える事が出来るのです。
ゴルフが上手くなるメンタル術
- マインドセットをポジティブ方向に動かす