『成功』は『自己達成的な予言』によってもたらされるモノです。精神主義のように聞こえてしまうのが残念ですが、自分の人生は良い方向に行く、自分で決めた目標が達成出来ると自分自身を信じている人の方が、遥かに仕事で成果を残す事が出来ます。
また、仕事に対する『ポジティブなマインドセット』は、成果に影響するだけでなく、本人の能力そのモノを引き上げる相乗効果が期待できます。
そして、重要な事は自分の能力を信じるかどうかは、先天的に決まっている特性ではありません。心の状態と同様に、『自信』も変化するのです。『ポジティブなマインドセット』で『支点』を動かす事で、自分の能力を最大限に発揮することが出来るのです。
ゴルフが上手くなるメンタル術
- 次の一打の成功を言葉にする
- ポジティブなマインドセットを作ることで能力を100%発揮させる
『オバマ元大統領』が証明した『自信』が能力を解放するという事実
ポジティブ心理学は科学ですから、様々な事例を紹介する背景には、きちんと研究成果やデータの裏付けがあります。しかし、精神論に聞こえやすいカテゴリーであるため、その信憑性を疑う人も少なくありません。
ここで、実験ではなく『現実の世界』で実際に証明された、自己評価と能力の解放に関する社会的現象について紹介します。
人種差別によって生まれた黒人と白人の成績ギャップ
内在化した人種のステレオタイプが、黒人と白人の生徒の成績ギャップを作り出しているという事は、何十も前から様々研究の結果で示されていました。また、テスト用紙に人種を書かせると、黒人の生徒の成績が落ちるという研究結果も報告されています。
そこで、ある研究チームは、アフリカ系アメリカ人の『オバマ』氏が大統領選になるという事実が、黒人と白人の成績ギャップに変化をもたらすと考え、選挙前と選挙直後に400人のアメリカ人生徒を対象にテストを行いました。
選挙前のテストでは、黒人生徒は白人生徒よりも成績が悪かったのですが、選挙直後では結果が一変しました。黒人生徒の成績は飛躍的に向上し、白人生徒との成績に差がなくなったのです。この事実をニューヨークタイムズ紙は、『オバマ大統領は、人々を鼓舞するロールモデルになった』と報じました。オバマ大統領が誕生した事で、これまで黒人生徒の成績向上を妨げていた『自己不信』を消しさり、自身が持つ能力を最大限に発揮することを可能としたのです。
もし自己不信に陥っているとすれば、仕事でよい結果を出す事は出来ません。難しいタスクや困難に直面している場合は、失敗する理由ではなく、『成功する理由』に注目しなければなりません。
足りない能力に注目するのではなく、自分が持っている重要な能力について考え、自らの能力をフルに発揮させ、競争優位を持たなければなりません。
自分の強みに着目する
自己評価を高めることが、仕事で結果を出す秘訣だとお伝えしましたが、これは自分の弱みを見て見ぬフリをする、空っぽの自己肯定をする、というポジティブシンキングをお勧めしている訳ではありません。また、自分の能力以上の仕事を引き受けてもいいという訳でもありません。
ここで大切な事は、『十分な努力』によって身につけた『自分の強み』に意識を集中させるという事です。いま直面している困難な状況を切り抜けるには、自分がどのような強みがあるのか考えるのです。ただ漠然と「私なら大丈夫」と自惚れるのとは違います。
その状況を克服するための、どのようなスキルを持っているのか、どのような経験を積んできたのか、という事に着目し自己評価を高めていく事が大切なのです。
スタンフォード大学の心理学者であるキャロル・デュエックの研究によると、人は『固定したマインドセット』を持つ者と、『成長のマインドセット』を持つ者に分かれるといいます。
『固定したマインドセット』の持ち主は、自分の能力はもともと決まっていると考え、『成長のマインドセット』の持ち主は、努力によって自分の基本能力を伸ばせると信じています。キャロル・デュエックは、『固定したマインドセット』の人々は、成長の機会を逃す一方、『成長のマインドセット』の人は常に能力が向上していくとい事を、2年間に渡る実証実験で証明しました。
キャロル・デュエックは、373人の中学生を対象とした実験において、「固定」と「成長」のどちらのマインドセットを持っているかを事前にテストし、その後2年間の成績を追跡しました。その結果、『成長のマインドセット』を持っている生徒たちばかりが、テストの平均点を伸ばしている事に気づきました。『成長のマインドセット』を持つ事で、潜在的可能性を最大限に発揮する一方、『固定したマインドセット』は成長を止めてしまうのです。
自分の力は変わりうると信じている人は、現状をより良くするための行動を取り、そのチャンスに気づく事ができます。現実は、それを自分がどう捉えるかに大きく影響され、相対的な時間軸すら伸ばす事ができます。自分自身や自分の仕事をどう捉えるかを変えれば、成果は劇的に改善できるのです。
ゴルフが上手くなるメンタル術
- ミスして当たり前という態度はとらない
- 自分のゴルファーとしての強みを再認識する
- ショットが成功するイメージを高める
自身の仕事を『天職』と捉える事ができるか
イェール大学の心理学者であるエイミー・ウェズニスキーは、仕事の捉え方と業績の関係性を長年に渡って研究しています。その研究の中で、あらゆる業種の労働者との面接を重ね、仕事に対する『マインドセット』には3種類に分ける事ができると結論づけました。
仕事に対する『マインドセット』は
- 勤め
- 専門職
- 天から与えられた使命
の3種だという事です。仕事を「勤め」と捉えている人にとって、仕事は作業であり、働かなくては生きていけないから働いているに過ぎません。仕事を「専門職」と捉えている人は、技術を高め成功に繋げたいと考えています。そして、仕事を「天から与えられた使命」と捉えている人にとっては、仕事そのものが目標であり、報酬の大小は関係ありません。その仕事が世の中のためになると信じており、仕事自体に意義や目的、満足感を得る事ができます。そして「天職」だと考えられるからこそ、フロー状態で仕事に励む事ができ、結果として大きな成果を挙げることができるのです。
そして大切な事は、どんな仕事でも「天職」にする事ができるという事です。そこに社会的地位や、報酬の大きさは関係ありません。『マインドセット』と同様に、自分の仕事をどう認識するかが、仕事の成果に影響するのです。
仕事のマインドセットを高める方法
自分の裁量で仕事に変化を加える事が出来ず、また仕事のやりがいを見出せていない場合はどうすればいいでしょうか。その場合、ハーバード大学の超人気講師であるタル・ベンシャハーの『天職記述書』を実践するといいでしょう。その方法は、
- 自分の仕事について、他の人が是非やりたいと応募するように書き表す
- この時事実を捻じ曲げてはいけない
- その仕事から得られる意義を強調する
- 今の仕事は人生の大きな目標にどう繋がるか考える
というものです。
どんな仕事でも、それを人生の目標や価値観と結びつける事ができれば、そこに大きな意義をもたらせる事が可能になります。日々の仕事を個人的なビジョンと同調させる事が、自らがその仕事を天職と捉えるための第一歩となります。
仕事の意義を考えることによって新しい可能性が開かれる。そして、その可能性は自らが構築するものである(エイミー・ウェズニスキー)